令和にこそ読もう、麻雀放浪記

みなさんはお金が必要な時、どのような行動を取るでしょうか。まともな人は労働をするでしょう。しかしそれは現実のお話。もしこれが「麻雀放浪記」の登場人物なら…

こんにちは、whale14です。

今回は私が最近読んだ「麻雀放浪記」の感想です。この本は1969年刊行とだいぶ昔の小説なのですが、今読んでもかなり面白いどころか、現代の文化と比較して読むことでより味わい深くなっていると思います。

そしてこの「麻雀放浪記」、実は麻雀を知らなくても楽しめます。なぜかというと、ほとんどイカサマで勝敗が決まるからです。私も麻雀を打てはしますが、強くないどころか点数計算ができないです。

その程度の知識でも読むことにほぼ支障はないので、安心して読んでみてください。強いて言えば、ゲームではなく実物の牌で麻雀を打ったことがあると、どんなイカサマをしているのかイメージは付きやすいと思います。

というわけで「麻雀放浪記」の面白かったポイントを3つに絞って紹介させていただきます。ぜひ最後までご覧ください。

タイトル:麻雀放浪記
作者:阿佐田 哲也
出版社:双葉文庫

「戦後」という時代設定

「麻雀放浪記」は正直にいうと文体が古くて読みづらく、現代人には知る由のない単語も多く登場します。しかしその読みづらさが、「麻雀」という身近なゲームを題材とした小説を、まるでファンタジー小説かのような壮大な世界観に錯覚させてくれます。

題材となっている麻雀一つ取っても、現代の主流な「リーチ麻雀」ではなく「アルシーアル麻雀」というルールで行われています。(簡単に言うとリーチドラなどがないルール)

本編で語られる情景は焼け野原や廃墟など、日本の話をしているとは思えないような単語ばかり出てきます。日本円の価値も現代とは全然違いますし、何より道徳が全くありません

昔は体罰が当たり前だったというようなレベルではなく、本当にひどいことばかり起きます。私は戦後を経験していないため、この戦後の描写が現実に即したものなのかはわかりませんが、令和の人間に耐えられるようなものではないでしょう。

しかし東京が舞台のため、有楽町月島上野などなじみのある地名がたくさん出てきます。つまり「麻雀放浪記」は令和に読むことで、知っている場所で知らない常識がはびこっているという、親近感と違和感を同時に味わえる新感覚の小説に進化しているのです。

存在しない「道徳」

先ほども少し言及しましたが、本編で起こるイベントはほとんど、発覚したらおまわりさんのお世話になってしまうようなことばかりです。

実はこの作品、最初から最後までずっと麻雀をしているわけではありません。冒頭はチンチロリンというサイコロを使ったギャンブルから始まり、賭け麻雀以外にもたくさんの悪いことを経て、最終的には賭け麻雀など比にならない程悪いことをして終わります。

少しきつめに説教をするとパワハラなんて言われてしまうような令和に生きる現代人には、刺激が強すぎます。

そして何より驚いたことがあります。なんと今回私が読んだ「麻雀放浪記」。正確には「麻雀放浪記(1) 青春篇」です。

なんと、主人公の哲にとってはこれが青春なのです。坊や哲の青春を彩るのは一体どのような人物たちなのでしょうか…

好きではないが「魅力的」

主人公の哲は中学校を卒業したばかりで、周りからは「坊や」と呼ばれています。そんな彼をギャンブルの道に引きずり込んだのは片腕がない上州虎」。哲の知り合いですが、本作は上州虎が哲をカツアゲするところから始まります。

上州虎とともに向かった賭場で出会ったのが「ドサ健」。哲のライバルのような存在で、作中で一番悪さをしています。しかし愛に一途な一面を持っていたりと、意外と憎めない奴…ということもなく多少の可愛げがあってもやっていることが悪すぎて擁護できません。

そんなドサ健を倒すべく哲が手を組んだのが師匠ポジションの「出目徳」です。彼はとてつもないイカサマの技術を持っており、哲にイカサマを教えたのも彼です。麻雀以外では周りに迷惑をかけるような悪さはあまりしません。

そしてドサ健に一泡吹かせるための1局で最後の1人として面子に加わったのが「女衒の達」。女衒というのは水商売の女性を商品として売り買いする職業のことです。

いかがでしょうか。魅力的ですよね?
…この説明でそんな感想が出てくるわけがありません。

では一体何が魅力的なのでしょうか。それは彼ら全員が、麻雀に文字通りすべてを賭けているというところです。彼らは間違いなく「ろくでなし」なのですが、麻雀をしている時だけは本当にかっこいいんです。勝つために全力を尽くし、負けたとしても支払いを反故にしたりせず、負けたからには潔く散ろうという気概があるのです。

彼らが麻雀を通してしのぎを削りあった末に少しずつ芽生えていく、因縁なのか友情なのかもわからない絆のようなものが芽生える過程こそが、本作の一番の見どころだと思います。

まとめ

以上が「麻雀放浪記」のおすすめポイントです。本音を言うと人を選ぶ作品だとは思いますが、最後まで読めば絶対に後悔はしないと約束します。ぜひシーシャのお供に読んでみてはいかがでしょうか。

そういえば雀卓が置いてあるシーシャカフェというのもあります。機会があれば紹介する記事を投稿したいと思いますので、その時はぜひご一読いただければと思います。

それでは今回は以上です。
ご覧いただきありがとうございました。

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